ティアラ2
玄関先ではモカが初めて見る透吾を怪しんで、あたしたちに近づいたり離れたりしながら、キャンキャン吠えていた。それはもう、例えようのないくらいうるさくて、思わずご近所さんが覗きにくるんじゃないかと心配するほどだった。

そんななか、いちばんに玄関を覗いたのは、台所にいたお母さん。最初は彼を「透吾」だと思わなかったみたいで、いつものように「突然、ひとを連れてきた」ということに対して表情を歪めていた。

急いで着替えにいったお母さんとすれ違いで、妹の美空がこちらに近づいてくる。美空はすぐに気づいたようで、透吾を見た瞬間、ぽかんと口を開けたまま、持っていた漫画本をパサパサと足もとに落とした。
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