ティアラ2
「へぇ……恋はここまで人を変えるのか」

そうつぶやいて、直子はベンチに置いていたお弁当を、重ねたひざの上に乗せる。

「旅行のために貯金してるから」と、カフェへの誘いを断った彼女。自分だって同じじゃない。

週3回、ファーストフード店で働いているみたいだし、いまは何を言っても「太一、太一」だもんね。

「それにしても……あの深町が、そこまで美和のことを考えてるとはねぇ」

袋からサンドイッチを出していると、直子は箸でウインナーを挟みながら、チラリとこちらを見る。

あたしはにんまり口元を緩めた。

「ふふっ……日数を増やしたのは、できるだけ早く家を出るためだったんだよ」

「はいはい」

昨日言われた台詞を再現すると、直子は聞き飽きたというかのように片手で耳をふさぎながら、おかずを口の中に放り込む。
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