ティアラ2
透吾が「こんばんは」と笑いかけても、美空はあ然としていて。あたしが彼に「妹なの」と説明すると、彼女は本も拾わず、慌てて奥の部屋へ走っていった。

「お母さん!」と、美空の慌てた声。それを聞くあたしは「まぁ、当たり前の反応よね」とため息をつく。

そこで現れたのが、この家に透吾を連れてきたらいちばん面倒くさい反応をするだろうと想像していた、お父さん。
「美和、お前……」
それしか言わなかったけれど、きっとお父さんの頭の中には、渋々、交際を許すことにした篤紀の姿が浮かんでいたはず。

眉間にしわを寄せてショックを受けているお父さんとは違い、階段からひょこっと顔を覗かせるバカ兄貴は「何、新しい彼氏か?」と訊ねてきた。彼もまた、透吾をその辺にいる男と思ったのだろう。
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