ティアラ2
そのあとは、もう大変だった。美空から話を聞いたお母さんの一声で、みんなは急いで正装に着替えはじめる。

彼をリビングへ通してからも、なかなか現れないみんな。仕方なく、あたしは時間稼ぎとして、自分で彼に出すお茶を淹れにいく。

ガラスコップのなかの氷が溶け、半分くらいの大きさになった頃、ようやく家族全員が揃ったんだ。

あたしは一応「お父さんとお母さんに話がある」って言ったんだけど、なぜか兄妹まで集まったものだから、ずらりと家族が並んだときは透吾も少し苦笑いだった。

「……そこで、美和さんをモデルにと考えているのですが」
透吾はあたしの横で、今度出すつもりの写真集のことを話す。その間、みんなは回覧板のように1枚の名刺を回していて……。多分、まともに聞いていたのは、あたしだけだと思う。
< 261 / 527 >

この作品をシェア

pagetop