ティアラ2
「……」
はいはい、そうですね。あなたは天下の透吾様だもの。あたしみたいな庶民に手を出すほど暇じゃないわよね。

いちいち見下すような言い方で返してくんじゃないわよ。ほんとイラッとくる。
口を尖らせてしかめっ面になる、あたし。

先にエレベーターをおりた透吾。彼はスタスタと1103号室の前へいき、ドアの横にある機械に人差し指を置いた。

指紋照合で開く扉。

ここからじゃ玄関と廊下くらいしか見えないけれど、それだけでも中が広いことがわかってしまう。だって、ふたつともうちの倍以上あるから。

「どうぞ」
「……お邪魔します」
執事みたいな態度で、丁寧な手招きをする彼。あたしはゆっくりと、足を踏み入れた。
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