ティアラ2
「よし、あとは髪だけ」

ポーチと入れかわりに、鞄から出したふたつのヘアゴム。

「来る前にやっとけよ」

待ちくたびれたというかのような態度で、仕度をするあたしを見つめる篤紀。

「今日着てきた服装には、この髪型は合わないの」

ふんと顔を背けて、鏡の前に立つ。

耳の後ろで緩めに結んだ髪。この髪型をするために、今朝はいつもと違うカーラーを使ってふわふわにしてきたの。

「どう?」

「はいはい」

くるりと回ってポーズをとっても、篤紀はちっともほめてくれない。まぁ、いつものことなんだけどさ。

「さ、行くぞ」

椅子から離れて、彼は部屋を出ていく。あたしは頬を膨らませながらも、「はぁい」と返事をし、後をついていった。
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