ティアラ2
「こんばんは」
驚くあたしをクスッと笑いながら、落ち着いた口調で挨拶してくる。
「あ、こんば……あ、あのっ! 借りてた洋服……今日は持ってきてなくて。クリーニング屋に出してたんで、ちょっと遅れてしまい」
「あぁ、あれは透吾が買ったものだから、あたしに返す必要はないわよ」
借りたままの洋服を思い出して、あたふたしたあたし。すると、彼女はにっこり微笑んで首を横に振る。

そう、彼女はあの雨の日、着替えの服を見立ててくれた女のひとだった。

「あ、そっか……」
あれは透吾に返さなきゃいけないんだった。冷静さを取り戻し、彼に目を向けると、向こうもあたしを見ていた。

「何飲む? オレンジジュース?」
「え……あ、烏龍茶」
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