ティアラ2
「ふたりとも、今日はそのくらいにして。美和さんが困ってるじゃないですか」
シールをはがすかのように、アカネさんの手からあたしの手を救ってくれる男の子。
「すみません、びっくりしましたよね? いつもこんな感じなんですよ」
茶色のふわふわした髪。甘い顔立ちの彼は、静かになったふたりに呆れながら、話しかけてくる。

「あ……ううん、大丈夫」
この子、あたしより年下だよね? どう見ても、陽子さんやアカネさんのような成人ではない。高校生くらいに見える。

このひともスタッフさんかな、と考えていたとき彼は持ったままのあたしの手を、自分の口元へ近づけた。
「専門学校へ通いながら、透吾さんのアシスタントをやってる圭太です」
「あっ」
なんだ、このキザなガキはっ!?

自己紹介のあと、手の甲に軽くキス。
硬直したあたしに、彼は穏やかな表情を見せ「やっと逢えましたね」と囁いてくる。
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