ティアラ2
「こちら、吉永太久郎さん。写真集を出してくれるとこの編集者さんだ」
さっきあたしのことを聞いていた……アゴヒゲのひと。

「スマーツ出版の吉永です。いやぁ、百瀬さんがモデル依頼を引き受けてくれたお陰で、やっと出すことができます。助かりましたよ」
吉永さんはそう言って、白い名刺を渡してきた。ぺこりと頭を下げる、あたし。

受け取ったのを確認して、透吾は少し腰を浮かせた。そして、吉永さんのとなりを差しながら……。
「で、こちらがアートディレクターの逢坂祐子さん。簡単に言えば、本のデザインしてくれるひと」

このひとも、わざわざ名刺を渡してくれる。
「はじめまして」
「あ……どうも」
恐縮してペコペコと、何度も頭をさげた。だって、透吾の話し方が丁寧だから、失礼な態度じゃだめな相手だと思ったの。
< 358 / 527 >

この作品をシェア

pagetop