ティアラ2
陽子さんが透吾の父親のもとで働き始めたのは、いまから5年前……27のときだったらしい。
才能を認められ、このまま順調に行くものだと思えていたスタイリストでの道。でも、思わぬ不幸が彼女を襲った。

「交通事故でね」

突然の、両親の他界。一人娘だった彼女は悩みに悩んだ結果、スタイリストの夢を諦めて親のあとを継ぎ、いまの店のオーナーになったという。

そんな彼女の才能をもったいなく感じていたのが、当時……圭太さんのようにカメラマンのアシスタントをしていた透吾だった。

「絶対にオヤジを越えるから、俺についてきて損はしないよ……って、まだ10代の男の子に言われたのよ」

彼にそう言われた日のことを思い出して、クスクス笑う陽子さん。彼女は「店のオーナーを続けながらでもいい」と言ってくる彼に甘え、またスタイリストの道を歩き出したらしい。
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