ティアラ2
「……け犬はあなたでしょ」
はいはい、頑張って言い返したいわけね。
「声が小さくて聞こえないんですけど」
ボソボソつぶやいてないで、はっきり言いなさないよ。どう返してきたって、言い負かしてやる。

図星をつかれたせいか、笹野京香の表情にさっきまでの余裕なんて、これっぽっちも残っていなかった。

それどころか、彼女は顔を上げ……。
「負け犬は百瀬美和、あんただって言ってんのよ!」
別人のような声で、荒々しく吠えた。

「プッ」
わざと大げさに吹き出す、あたし。
「怖っ! 笹野さんって二重人……」
「……っ!!」

パンッて音が駐輪場全体に響いた。
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