ティアラ2
戻りたい、あの頃に。

「……何もしてないって決めつけないで」

あたしはあたしなりに、篤紀のことを大切にしてた。

「何もしてないのは、笹野さん、あんたのほうよ!」

真っ正面からぶつかってないやつに、そんなこと言われたくない。

大きな声を出し続けたせいで、喉が渇いた。ハァハァと息をきらすあたしは、目が潤んだことがバレないように、向こうをむいた。

「せいぜい頑張れば? そんなやり方で幸せになんてなれるわけないから」

その言葉を放って、あたしは店から離れていく。このままじゃ泣いてしまいそうで、この女に泣き顔は見せたくなかったから。
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