ティアラ2
「待って!」
慌てて呼びかけた。すると彼はピタリと立ち止まり、こっちに振り返る。

「あのひとはカメラマンなの! 透吾っていうカメラマン。あたし、あのひとの写真集に……」
まずは誤解をとかなきゃ、透吾とはそういう関係じゃないんだって。そう考えた、あたし。だけど篤紀は……。

「だから?」
冷たい表情でそう訊ねてきた。

「え……」
思わぬ返事に戸惑う。

「……だから何? 別にそんなこと、俺に言わなくてもいいだろ」
変わらない態度、もうあたしには興味がないと言うかのような口調。

篤紀の心は完全に離れている。そう確信した。
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