ティアラ２

引っ張っても抵抗しなかった。けれど、顔は前を向いたままで、篤紀はあたしを見ようとしてくれない。

「笹野さんのこと好きになったの？　ふたりで出かけたんでしょ？」

やだよ篤紀、行かないで。
あの子を好きにならないで。

「ねぇ、あたしのことは……もうどうでもいい？　もう好きじゃない？」

なんで何も言ってくれないの？
ほんとに……冷めちゃったの？

「……答えてよ。ねぇ……たしたち、そんな簡単に終われる？」

ギュッと掴んだ服。揺さぶるように腕を引き寄せると、彼はゆっくりあたしを見下ろした。