ティアラ2
「……なんでもない。よだれ垂らすなよ」
彼はスッと視線を逸らし、握っているドアノブを手前に引いて、出て行った。

「……」
部屋の中を照らすのは、外からの月明かりだけ。

横になって胸の上まで布団をかける。窓の向こうをぼんやり眺めたら、ちょうど空に浮かぶ白い月が見えた。

「…………」
視界がぼやけ、まん丸だった月が楕円に変化する。
「……っ」
ギュッと目を閉じたら、少しだけまつげが濡れた。
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