ティアラ2
“ああ、終われるよ”
最後に見た篤紀の姿が、まぶたの裏に映る。

「あんな顔……知らないよ」
別人のようだった。彼は好きじゃない女には、あそこまで冷たくするんだ。
「ほんと冷たい……」
でも、あの態度を見て、しみじみと思ったことがある。

「篤紀は……ちゃんと好きでいてくれてたんだ」
鼻先がジーンとして、唇が小刻みに震える。

“お前なぁ”
あたしのすることに、いちいち文句をつけていた篤紀。
“バーカ”
いつも見下すような態度だし、話しかけたって「はいはい」ってテキトーに返される。……だけど。

“ほんと、しょうがねぇな”
いつだって彼は、優しい眼差しであたしを見ていた。

「……っ」
声が漏れかけて、唇をグッと噛んだ。
泣くな、泣くな、と心の中で唱える。
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