ティアラ2
“本命の子が置き忘れたものじゃないかな”
この前のアカネさんの言葉が、頭の中で響く。化粧水へと伸びていた手は、ピタリと止まった。
「…………」
触れることすらできなかった。何も見なかったことにして、そっと棚の扉を閉めるあたし。


タオルで顔を拭きながらリビングへ戻ると、みんなももう起きているみたいで、なんだかワイワイ騒がしかった。

「アカネのイビキ、俺の部屋にまで届いてたし」
「うっそー!? あたし、イビキなんてかいてないわよぅ」

このふたりが揃うと、いつも賑やか。透吾とアカネさんはまだパジャマ姿でキッチンの前で立ち、昨夜のことを話している。

「かいてたって! おっさんみたいにガーガー」
「なっ……ひどいそんな言い方っ! おっさんじゃないわよ!!」
「ひどいのはアカネのイビキ」
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