ティアラ2
透吾は何も持たずに腰に手を置き、あたしをじっと見つめていた。その表情はいつもより真剣で、冷たい感じにもとれる。

やがて、彼の手はカメラへと伸びた。それを目にし、ホッと胸をなでおろすあたし。

静かにレンズを向けられた。

「…………」
シャッターを押さずに、眺めるだけの彼。
あたしはどんな表情をすればいいのかわからなくて、悩みながらも普通の表情でいて指示を待った。すると、透吾はカメラを構えたまま、こうつぶやく。

「なんで我慢してんの?」
「……え?」
唐突すぎて、何の話なのかわからなかった。聞き返しても、彼は答えてくれず……。
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