ティアラ2
泣きじゃくったあの日の夜、家まで送ってくれた陽子さんは、車からおりようとするあたしを呼び止めこう囁いた。
「不安だったのよ、彼も」

なんの前ぶりもなくて、頭がついていかなかったあたしは、多分きょとんとした表情で陽子さんを見ていたと思う。

「昨日の夜、言ってたの。アイツの素顔を引き出すことなんて、できんのかな俺……って」

付け足された言葉で、それは透吾の話だと察したあたしは、意外な台詞に耳を疑った。だって彼は……。

“いつもギャーギャーうるせぇくせに……肝心なことは言えないってか?”

そんな素振りをあたしにひとつも見せてなかったから。
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