ティアラ2
「なあに? 思い詰めた顔しちゃって」

撮影に戻る前に、熱くなった肌を化粧水で冷やしてくれていたアカネさんが、ひょこっと顔を覗いてきた。

「え、あ……ううん、気持ちいいなと思って」
「そう? ならよかった」

水気を失いつつあるコットンにまた化粧水をたらして、アカネさんは嬉しそうにする。慌ててごまかしたあたしは、にっこり微笑みながら、心の中でひっそりと考えていた。

“ひとりじゃねぇよ”

力強く抱きしめてくれた透吾。

あれ以来、篤紀のことは聞いてこないけど、彼のあたしに対する態度は、少し柔らかくなった気がする。冗談でからかわれても、意地悪って感じではないの。

うまく言えないけれど、愛情を持ったからかい方だと思えてくる。
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