ティアラ2
「心配して損した」とつぶやいて、直子はきた道を戻りはじめた。

「え、もう帰るの?」

あたしに会いにきたんじゃ……。そう思って呼び止めると、彼女はゆっくりと振り返り、また向こうをむいて、何も言わずに去っていく。

「そんなに変かな……」

可愛いのに、と心の中でつぶやいた。

今朝、これをきて鏡の前に立ったとき、あたしはまた自分を愛しく思ったの。

こういう服って「似合う、似合わない」がはっきり出るじゃない。それが似合うあたしはやっぱり「いい女」だなって。

人と同じことをしなきゃいけないって決まりは、ないでしょ。人と同じ格好をしていても面白くないし。

自分がしたいことをして、自分がきたいものをきる。それが「らしさ」だと思うの。

たしかに、今日は周りからジロジロ見られるけれど、そんなの気にしてたら「アイドル」なんてやってられない。

「そう、あたしはアイドルなの」

テレビで歌う人じゃなく、あたしは「篤紀のいちばん」になりたい。いつまでも輝いて、いつまでも愛されていたいの。
< 45 / 527 >

この作品をシェア

pagetop