ティアラ2
昼下がり、大学を後にするあたしは、携帯電話をピコピコ押しながら歩く。

そのとき突然、横からパシャッと、カメラのフラッシュが当たった。

「……またあなたですか」

振り向いて、パタンと携帯を折る。

うんざりした表情のあたしに「ははは」と爽やかに笑いながら、彼はカメラをおろした。

「いいね、その服。君が着ると、まるでこれから流行る物に見えてくる」

色黒の肌。堀の深いラテン系の顔だちと、ウェーブがかった黒い髪。スマートな体型で、身長はたぶん、篤紀と同じくらい。

彼はいつもと同じ赤い車から離れ、ゆっくりとあたしのそばへきた。

「いまから映画でも……」

「行きません」

2枚のチケットを見せてきたから、すぐに断る。
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