ティアラ2
「透吾。前に渡したと思うんだけど」

そう言いながら、彼は上着のポケットから銀の名刺ケースを出す。

「ええ、いただきました。ビリビリに破って、捨てましたけど」

渡される前に言ってやった。

目を丸くした彼は、やがて吹き出すようにクスクスと笑い、渡すはずだった1枚をまたケースの中に戻していく。そして……。

「あきらめないよ、俺は」

背を向けるあたしに、余裕に満ちた声で囁いた。

「君の魅力、君よりもわかってるつもりだから」

初めて会ったときと同じ、ふざけた台詞。


透吾……。もらった名刺には、下の名前しか書いていなかった。

彼はあたしよりもあたしを知ってると言い、去年の11月からずっとあたしの後を追い続けている、自称カメラマンの男。
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