ティアラ2
透吾は頬をほんのり赤くして、小さな声でブツブツつぶやく。

「…………」
聞いてない聞いてない、そんなくだらないこと聞きたくもないわ。

呆れて、ものも言えない。

つまり、こういうこと? 透吾のちっちゃな独占欲のせいで、笹野京香はモデルに選ばれたあたしを恨み、復讐としてあたしから彼氏の篤紀を奪った?

「……なめてる」

まだ憶測だけど、もしこの考えが当たっていたら、もうため息しか出てこない。

「行こう」
透吾の手を掴んで歩き出す、あたし。

「どこへ?」
透吾はぼけーっとした顔で、行き先を聞いてくる。返事すら面倒に感じたあたしは、何も言わずマンションから彼を連れ出した。
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