ティアラ2
「ちょ、出かけるなら車……」

「そんなのいらない!」

「どこ行くんだよ?」

「うるさいなぁ、黙ってついてくればいいのよ!」

駆け足で信号を渡る。引っ張られている彼は「仕事を残したままだ」とか文句を言ってくるけれど、そんなの知らないわよ!


目的地を聞かされてなかった彼は、着いた場所の建物を見上げ、びっくりした顔をする。

「ここって……」
「そうよ、あんたの元カノのバイト先」

ゆっくり見てる場合じゃない。そう思っているあたしは、また彼の手をグイグイ引っ張った。

久しぶりに聞く、自動ドアの音声。中に入ったあたしはもうひと言、付け足した。

「あたしも働いてたの、つい最近まで」
「えっ」
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