ティアラ2
「でね、これが前に言ってた……」
「ああ、言ってたやつかぁ」

彼女と話す、篤紀の声。

「想像してたのはもう少し大きいやつだったけど、いいじゃんそれ」
「ほんとに? 嬉しいな」

なんの話をしてるの?

「…………」
自分の意志でここまできたのに、ふたりの楽しそうな話し声を耳にして、さっそく後悔。あたしは下唇をキュッと噛んで、うつむいた。

隣にいる透吾がポンポンと頭をなでてくる。彼もドアに耳をあて、中の様子をうかがってるようだった。

「……」
「…………」
耳をすましながら、静かに目を合わせるあたしたち。

ほんと、何やってるんだろうね。透吾の言うとおり、こんなとこに来なきゃよかった。
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