ティアラ2
前に言われた「ひとりじゃねぇよ」って言葉を思い出す。……ちゃんと聞こう。

休憩室には重い沈黙が流れていた。その張りつめた空気は、部屋の外にいてもわかるくらい。

「あれ、冗談じゃなかったの?」
篤紀の声のトーンは、さっきより少し低かった。きっと真面目な顔つきで、彼女に聞いているのだろう。

「冗談なわけないじゃない」
笑みをまじえて返す、彼女。

それを聞いて、あたしはいても立ってもいられず、中に入ろうかとも考えた。けれど、ドアノブに手を置いたとき、透吾が止めてきた。

ダメだと言うかのように、静かに首を横に振る彼。仕方なく、あたしは盗み聞きを続けた。
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