ティアラ2
「でも笹野って、他に好きなやつがいるんじゃ……」

篤紀は、彼女の気持ちを素直に聞き入れない。「他に好きなやつ」という言葉が出たとき、心なしか、透吾の手がピクンと動いた。

「えっ、いないよっ! ……なんで?」
「いや、なんか……そんな気がして」

篤紀は気づいてたの? 笹野京香には本命がいる、って。

「いないいない。あたしはアッキーのことが……」

彼女は必死に否定する。
でも、これでわかった。

動揺した話し方。裏返ってるわけじゃないけれど、明らかに彼女の声は慌てていた。

ここに来るまで、あたしはもうひとつのストーリーを頭の隅に描いていた。……笹野京香は透吾に気持ちなんて持っていなかった、って最悪なパターン。
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