ティアラ2
……してないよ。浮気なんてしてない。

終われるよ、とあたしを突き放したのは、他にもつき合っている人がいると誤解してたから?

振り返る、透吾の車からおりるのを見られた……あの夜を。
篤紀は喧嘩しても、家まで来てくれて……外であたしが帰るのを待ってくれてた。

別れようと言われた、あの日も……。
後をつけて、マンションから出てくるのを……ずっと待ってた。

……最低だ、あたし。

「……っ」
泣くのをこらえきれなくて、息が漏れた。

それに気づいた透吾は、そっと腕を伸ばしてくる。抱えたあたしの頭をグラグラと揺らしながら、小声で囁く彼。
「よかったな」

その言葉を聞いた瞬間、涙腺がバカみたいに緩んだ。洪水のように溢れる涙。

まつげも頬もたくさん濡れた。嬉しくて、ホッとして、あたしは顔をグチャグチャにして泣いた。

鼻がつまる。口で息をしようと思っても、喉も苦しいから吐くだけで精一杯。

通路に響く、小さな泣き声。誰か来るかもしれないから早く落ち着きたいのに、泣きやもうと思えば思うほど、涙は溢れて止まらない。
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