ティアラ2
荒々しく吠えた彼女の言葉、どこかで聞いたことがある。

「……透吾、それ貸して」

素直に「辛い」と言えたら楽なのに、プライドが邪魔をして苦しいんだよね。

惨めにはなりたくなくて、「負けた」だなんて思いたくない。

綺麗になって愛されたい。普段からそう思っていれば、なおさらその気持ちは強くなる。

認めたくないの、1番になれない自分を。


あたしは濡れた顔を手で拭い、ドアノブを握った。

「負けてないよ」

薄暗い通路にずっといたせいか、部屋の中が妙にまぶしく感じる。
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