ティアラ2
「……美和」
突然、乱入したあたしに驚く篤紀。

同じようにびっくりしている彼女に近づいて、あたしは透吾から借りた水色の冊子を差し出す。

「この前は負け犬って言ったけど、笹野さんは負けてないよ……それ見て」

眉間にしわを寄せている彼女は、言われるまま冊子を開いた。

「透吾があなたをモデルにしなかったのは、自分だけの彼女でいてほしかったから。……他のひとにそういうのを見せるのが嫌だったからだって」

数ページしか見ていないけれど、その冊子の中の彼女は笑顔でいっぱいだった。

透吾しか知らない……透吾だけが引き出せる姿がたくさんあったの。
< 504 / 527 >

この作品をシェア

pagetop