ティアラ2
プロのカメラマンなのに、ピントがずれた写真もあった。そこに映されていたのは、見たこともない天使のような微笑み。

気取ってない彼女がいっぱい写ってた。

正直、負けた気がしたの。「この子、こんな表情をするんだ」って焦ったよ。その笑顔に夢中になった篤紀を想像して……。

でも、そんな姿でいるのは「透吾の前だから」なんでしょう?

「透吾に、構図やピントなんて気にせずにシャッターを押させることができるのは、あなたしかいないと思う」

冊子を持つ手が震えだす。うつむいてるから表情ははっきり見えないけれど、鼻水をすする音はちゃんと聞こえた。

笹野京香もあたしと同じ気持ちだったのかもしれない。大切なひとをとられたような気がして、不安で……辛かったはず。
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