ティアラ2
「一件落着」
ふうっと息をついて、あたしはふたりから目を離した。

あたしたちが部屋に入ったとき、ガタンと椅子から立った篤紀は、いまも立ち尽くしたまま……ふたりをぼんやり眺めていた。ワケがわからない、といった表情で。

「……篤紀」
こっちを向いてほしくて名前を呼ぶと、彼はハッとした表情をしてあたしを見た。

混乱しているみたいだった。

あたしと一緒にいた男が、今度は笹野京香と抱き合っている。何も知らない篤紀からすれば、この光景はミステリー小説の最初と最後だけを読んだような気分なのかもしれない。

でも、もう誤解はとけたかな……?

「……」
なんて言えばいいのかわからない。だけど、そこにいる篤紀の表情は、この前とは全然違う。……もう冷たくないの。

嬉しくて、前みたいに甘えたくなって、あたしは透吾の真似をすることにした。

「おいでっ」
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