ティアラ2
てか、怪しすぎる。

水商売みたいに下の名前しか書いていない名刺を渡してきたり、服装だって普通じゃない。

「黒のシャツにグレーのスーツ。……確実にあっち系じゃない」

どうせ、カメラマンっていってもアダルト系に決まってる。

だから、この7カ月、透吾は何度も目の前に現れたけれど、あたしはさっきみたいに適当にあしらって、シカトを続けているの。

安く見ないでよね。

あたしの魅力はあたしがいちばんわかってる。それに、そんな写真を撮らせるために、自分を磨いてるんじゃないわ。

数ヶ月前のことを思い出してイライラしていると、透吾の赤い車が横を通りすぎていった。

……軽くクラクションまで鳴らしてきやがった。すれ違いざまに見えた、透吾の笑顔。

「ムカつく」

下唇をきゅっと噛み、あたしは道端で立ち尽くす。
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