ティアラ2
家に帰ったあたしは、顔を洗い、また化粧をしなおしてバイトに出かけた。

従業員専用の控え室に入ると、中には篤紀がいた。彼はあたしを見るなり、すぐに顔を背け、ツンとした表情で「はよ」とつぶやく。

「おはようって、もう夕方よ?」

「……ここじゃ、これから働く人にはそう声をかけるんだよ」

「そうなんだ。あ、ねぇねぇ篤紀……」

話しかけているのに、彼はなにも言わず、背中に回したエプロンのひもを結びながら、すぐそばの椅子に腰かけた。

機嫌、悪いのかな?

「あれ、どうしたの? その足」

左を引きずっているように見えた。問いかけると、彼はハァッとため息をつき、右ひざに左足を乗せ、ジーンズの裾を上げていく。

「これは誰のせい?」

赤く腫れ上がった、皮膚。それを見たあたしは、この間の飛び蹴りを思い出し「あ……」とつぶやいた。
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