ティアラ2
「……」

あたしは静かに、ふたりのやり取りを眺めていた。

「サンキュ」

なに、礼を言ってんのよ。

「いえいえ。早く治るといいね」

湿布を貼ったくらいで、いい気になるんじゃないわよ。

なんで微笑みあってんのよ、あんたたち。

「あ……じゃあ、あたしは先に行ってるね」

あたしの視線に気がついた彼女は、救急箱を持って、遠慮がちに部屋を出ていった。

「……」

なんかムカつく。

パタンと閉まったドアを見つめ、歯を食いしばっていると、ジーンズの裾をもとに戻した篤紀が話しかけてきた。「早く準備しろよ」と、急かすように。
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