ティアラ2
ちょ……そんな目をしないでよ。カウンターはあたしがやるはずだったのよ。

「カウンターは任すって、さっき……」

お客さんが去った後、思わずつぶやいた。だって、あたしはずっとここで待ってたのに……。

すると、彼女は振り向いて、申し訳なさそうに返してくる。


「ごめんね。商品を案内したお客さんだったから、最後まで対応しようかなと思って」

両手を合わせて、謝られた。

「いや、それでいいと思うよ。最後までやってくれたら、客も喜ぶだろうし」

あ然とするあたしの隣で、篤紀は彼女に笑いかける。彼女の表情はパッと明るくなった。

「それよりごめんな、ひとりでフロアをやらせて。遠慮なく何でも言ってやって。言えば、こいつもやると思うから」

篤紀は完全に、あたしが怠けていたと思い込んでいる。
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