ティアラ2
さっきまで激しく手足をバタバタさせていたのに、いまはもう目を閉じて、気持ちよさそうにしている。

あたしは直子の腕の中にいるモカをじっと見つめながら、その言葉を聞いていた。

「あんたがムシャクシャしてるのは、ただのヤキモチ」

口を尖らせて、庭の雑草をむしっていると、直子はモカを放してこちらを向く。

「深町とすれ違って、イライラがたまってるんじゃない? 美和はその笹野って女の子を憎むことで、ストレスを解消してるような気がする」

ゆっくり顔を上げると、直子はまっすぐあたしを見ていて。その目を前にしたら、なんだか泣きそうになってくる。

「だから、あんたがいましなくちゃいけないことは、TAMAKIでモテることでもなく、その子への嫌がらせでもない。……深町との時間を作ることだよ」
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