ティアラ2
ね、と微笑まれた。

思わず涙ぐんでしまったけど、こんなことでは泣きたくないから、あたしは必死に下唇を噛んで、泣くのをこらえる。

「あんた、3冠をとったとき言ってたじゃない。……これからは篤紀だけのアイドルになるって」

直子はすっくと立ち上がり、疲れた足を揉みながら、足もとのカバンを手に取った。

「もう、たくさんの人にモテたいなんて思ってないんでしょ? なら、その子をライバルにしても意味がないよ」

まだ座ったままのあたしにそう言って、彼女は玄関へと歩いていく。

「ありがとう」

家の前まで見送ったあたしは、モカを抱きながら礼を言う。

直子はモカに笑いかけながら「頑張れ」と囁いた。
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