ティアラ2
来るまでずっと考えていた、篤紀のことを。そのせいで、本人を目の前にしたとき、思わずどもってしまった。

目もちゃんと合わせづらい。

入り口のそばでモジモジと、ハンドバッグの中を覗いてみる。別に探すものなんてないんだけれど。

そうしている間に、篤紀は自転車のキーをチャリッと鳴らしながら、そばに来た。

あたしたちは何も言わず、肩を並べて店に入る。


見慣れた店内。

従業員専用の通路まで歩く中、あたしはぼんやりと、そこにいる数人のお客さんを眺めていた。

ヘッドフォンを耳に当て、目を閉じ、音楽に身を委ねている男の子。

数本のDVDを腕に抱え、それでもまだ他の映画を探しているカップル。
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