ティアラ2
篤紀との時間を作る、かぁ。

「……」

いつからだろう。ふたりでいても、無理に話さなくなったのは……。

付き合ったばかりの頃は、一緒にいると「話さなくちゃ」って思うこともあった。

無言になるのが怖くて、常に楽しい時間を作ろうと考えていた。

でも今は、話すことがなければ、お互いに黙ったまま。別に「それが嫌だ」とは思わない。

静かでも、流れている風は温かいし、ぎすぎすした空気でもないから……。

だけど……。

「ねぇ篤紀っ」

クシャッと掴んだ、彼の服を。

立ち止まった篤紀は、腕にあるあたしの手を見下ろし、「ん?」と顔を上げる。
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