ティアラ2
黒いジャージのズボンに白のTシャツ。首にかけた紺いろのスポーツタオル。

着ているものはごくごく普通。なのに……なんでだろ、今日は妙にかっこよく見えてしまう。


「ああ、起きたのか」

小人たちに囲まれたわたくしに、彼はそう言ってペットボトルを渡してきた。

「ありがとう、王子さま」

おとぎ話の世界に入り込んで、思わず篤紀をヒーローにしてしまった。そんなあたしに彼は目を細め、呆れた顔をする。


「お前ら、もう遅いから……そろそろ帰れ」

「兄ちゃん、今からイチャイチャするんだぜ」

「ばっか、何言って……」

冷やかされて、耳まで真っ赤にする。その横顔を見つめながら、あたしはペットボトルの蓋をクルクル回していた。
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