ティアラ2
問いかけると彼は「んー」とつぶやいて、すっくと立ち上がる。

「なんかビビった。……お前でもそんなこと言ったりするんだなぁって」

振り返ったときは、もういつものすかした態度に戻ってて。つまらなく思いながらも、あたしはその表情を見つめた。


「あいつ。……今日、鼻に絆創膏はってたやついただろ?」

地面に転がったままのサッカーボールを踏みながら、話し出す篤紀。

記憶をたどって「うん」と頷くと、彼は足首をうまく使い、ひょいっとボールを足の甲に乗せた。

「数年前、俺……弥生のことで家にいたくなくてさ。学校が終わってもすぐ帰らないで、毎日毎日……ブラブラしてた」
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