彼女ノ写真
あの時、エークンに対しても、今の表情を見せる事が出来たのならば、今こうして私達は微笑み合ってはいないだろう。




複雑だった。




でも、この笑顔を独占できる立場にいられる事を幸せに思う。嬉しく思う。




私達は、軽く手を繋ぎ、屋上へと歩き出す。




頭上では、高く遠い空へ向けて、お昼休みの終わりを告げる鐘が鳴り響く。




「あー、、、サクラちゃん。授業、どうする?」



「え?今更じゃない??気分的に」



「そう──だね。何か、ごめんね」



「気にしない。気にしない!バドミントンしてる時から、サボるつもりだったし」



「あははははは~私もよ」




まったく私達は、真面目じゃないな~と思いながら、シキちゃんの笑い声に重ねて、私も感情を音にするのだった。




シキちゃんが、もう、こんな風に笑っている事を、当然の事ながらエークンは知らない。




とは言え、あの少年も今頃はきっと、マキ先輩の全身から発せられる、力強く荒々しいオーラと、その言葉によって、笑顔を取り戻している事だろう。




エークンの横には、マキ先輩がいる。




その事実だけで、シキちゃんが安心して笑うには、充分すぎた。




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