彼女ノ写真
シキちゃんは、エークンのホオにそっと口付けをした。




────カシャっ!




シャッター音と、一瞬で生まれて消えた熱気が作り出した止まった時間が、その場にいた私達全員の気持ちを高揚させた。




「わーっ!」「おぉ~!」「きゃー!」「あははは~!」




四者四様の反応、そして五人目の反応は、六人目であるシキちゃんをも驚かせていた。




「ちょっと、エークン!どうしたの!!ねー、大丈夫?!!」




そう、彼は倒れこんだのだ。




腰が抜けたと言う表現が、まさにぴったりだ。




「はは、ははは、大丈夫、大丈夫だよ」




シキちゃんの手に導かれ、立ち上がった彼の顔は、幸せに包まれていた。




その顔を見たマキ先輩は、いつもなら冷やかすのだろうけれども、今日は、今この時は、照れたような微笑を浮かべた。




その微笑みが、今を集約している気がした。




この場にいるみんなが、幸せを共有したのだ。とても柔らかく、優しい幸せを。




こうして、取り戻した日常は、そんな感じで再び動き出した。




やっぱり、この日常が私は大好きだ。深く、強く、そう思った。




< 242 / 253 >

この作品をシェア

pagetop