彼女ノ写真
一見すると、ただの写真だけど、ただの写真じゃないから、彼女は落とされる事を恐れた。




それは、落とした事により、思い出などが無くなる事が嫌なのではなく、やっぱりどうしようもなく、恥ずかしいのだろう。




ただ、仮に路上に落としたとして、誰もその意味を分かりはしないだろう。




僕と彼女の関係性を充分に理解した、先輩たちであれば、あるいは理解できるのかもしれないけど、恐らくその特別性までは、探る事が出来ないだろう。




写真の裏には、シキちゃんの直筆でたった一言───はい───と記されている。




彼女は、僕があの写真と共に送ったラブレターの返答に、あの写真を使ったのだ。




ただ一言───はい───と添えて。




それが、僕がいつも大切に持っていた理由。




彼女が必要以上に、恥ずかしがる理由。




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