海の乙女
プロローグ
人魚――
それは海水で濡れると本来の姿を現す。
その容姿とは白い肌に美しいヒレ、艶やかな髪、そして天使の歌声を持つ、この世のものとは思えないほど麗しい生き物。
普段は人間の行くことができない海底にひっそりと暮らしている。
しかし、時々嵐が人魚をさらいに来る。
人間の間では人魚は高値で取り引きされる。
ある者は金儲けのために闇市場に売る。
またある者は鑑賞用の玩具とする。
そして少女、リリィ・テイラーも数年前嵐にさらわれた人魚の一人。
この物語はリリィが囚われていた城から逃げ出したことから始まる。