海の乙女

「さあ!もう観念しろ!逃げ道はなくなったぞ!」

「っ……」

どうしよう…っ。

もう…一か八かやってみるしかない。

一人の兵があたしの腕を掴もうとした瞬間――

「なっ…!?」

思いっきり体当たりをした。

ひるんだ隙に逃げようと思ったが相手は二人。

もう一人の兵に腕を掴まれ、無情にも捕まってしまった。

「離して!!」

「大人しくしろ!」

「いや!!やめて!!」

あたしは逃げようと暴れるが、男の人に力が敵うはずもなかった。

「ちっ、仕方ない。」

そう聞こえたのと同時に、首に鈍い痛みがはしった。

兵の一人に首の後ろを手刀で叩かれたのだ。

そう理解する間もなく、目の前が真っ暗になり、あたしの意識はそこで途絶えた。

—――…

「…なんだか可哀相ですよね。こんな女の子が牢に閉じ込められるなんて。」

兵の一人が今捕まえたばかりの少女を見ながらポツリとつぶやいた。

「なんだ?情でも移ったのか?」

「い、いえ、そういう訳ではないですが…」

「所詮、こいつはグリフィス男爵に買われた『玩具』だ。情など入れる必要はない。ほら、さっさと隊長に連絡しろ。」

「は、はい!」

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