海の乙女
あたしは自分の部屋ではなく再び倉庫で座り込んでいた。
自分が情けなかった。
役に立とうと思ってもそれさえもできない…。
ズキッと痛んだ手を見てみると豆ができていた。
人魚は人間よりも華奢で力も弱い。
たからって何もできないんだったら
あたしがここにいる意味って…
ナニ…?
ガチャという音とともにライトが入ってきた。
「リリィはここが好きなのか?」
ライトがそう言うのも無理はない。
最初、この船でもめた時もこの倉庫で同じようにうずくまっていたのだから。
「…なんであんなムチャしたんだ?」
「…だって…あたしだって何かしなきゃ…役に立たなきゃ…みんなにいらないって言われるかもって……不安で…。でも、やろうとすればするほど失敗しちゃって…。」
「そっか、それで…。ごめんな。気づけなくて…」
「ううん…。でも、絶対嫌われちゃった…。みんな呆れてたもん…。」
「あれくらいで誰も嫌いになんてならない。ただ、みんな心配なんだよ。リリィがケガでもしたら困るだろ?」
「でも…」
「『でも』はナシ!いいな!」
「うん…。」
「それに女の子なんだから、こんな手にマメができるまで頑張らなくていいんだ。」
ライトはキュッとあたしの手を握ってくれた。
「リリィにしかできないことがきっとあるよ」
「…そうだといいな」