海の乙女
「よお!!ライトじゃねーか!」
バーカウンターでグラスを拭いていた一人の男性はライトの知り合いなのか、声をかけてきた。
「マスター、久しぶり」
マスターと呼ばれた人は手入れされた顎鬚が生えており、ピシッとした白色のブラウスに黒色のベストとネクタイをした男性だった。
「ほんと久しぶりだな!…ん?新入りか?」
マスターはあたしに気が付いたのか覗き込むように見てきた。
「あぁ、まあな」
「こんにちは」
「ほー…」
マスターはあたしを下から上までじっくり観察するように見たあと…
「スカイブルーの目に雪のように白い肌…なんか、人魚みたいだな!」
と言った。
「え…っ」
あたしは男装しているにも関わらず、そんなことを言われるとは思ってもみなかったので思わず声が出てしまった。
「そんなわけないか!冗談だ!忘れてくれ」
と、がははっと腰に手を当て、豪快に笑った。
「…冗談じゃないとしたら?」
ライトはニヤッと妖しく笑った。